AIアシスタントが生活に浸透し始めている。世界で広がりを見せた当初、これらのデバイスが家庭内の親密な会話も記録されていることについて議論もあったが、それらの議論が消滅しかかるほどの便利さで人々の生活のパートナーになりつつある。
これまで私たちは、ニュース番組の天気予報コーナーの気象予報士の話を聞きながら、今日は暑いとか、明日は寒くなるとか、天気を把握していた。そしてパソコン・携帯電話・スマートフォンが台頭、自分が知りたいときに調べることができるようになった。そしてAIアシスタントが浸透する今日は、子供の弁当を作りながら、出かける支度をしながら「今日の天気は?」と話しかけると今日の天気を教えてくれる。
受動的に受け取っていた情報を、能動的に取得することができるようになった。
AIアシスタント機能が実装されているデバイスは便利だ。
仕事を終えて帰宅後、話しかけて音楽を流してもらい、夜には10分で消えるようにタイマーをセットして眠りながら10分間だけ音楽を聴き、起きたら歯を磨きながら今日のスケジュールと天気を質問して、それに応じて着る服を考える。
実にシンプルな使い方だが、これまではこの文脈の中に「CDをセットする」「寝る前に音楽を消す、もしくは消し忘れて朝まで流れ続ける」「スケジュール帳の今週のページを開く」「テレビをつけて関東の天気が順番に紹介される中、自分の地域の天気予報が紹介されるのを聞き耳を立てながら待つ」といった動作を要していた。
2021年を迎えようとしている今、知りたいことを知りたいときに質問して、すぐに回答を受けることができる。
ここで紹介するまでもなく、各社、様々なAIアシスタントデバイスを発売している。
GoogleのGoogleアシスタントが搭載されたGoogle Home
AppleのSiriが搭載されたHome Pod
AmazonのAlexaが搭載されたAmazon Ech
AIアシスタントに求める機能、自分が普段使っているデバイスなどとの互換性、そして置きたい場所のインテリアなどにマッチするかどうかの優先順位で選ぶといいだろう。
AIアシスタントは基本的に「我々の言葉を聞くトリガーワード」が発せられたときにそのトリガーワードを聞き取り、それ以降の質問など言葉を認知し、回答を返す。iPhoneユーザーは「Hey, Siri. 今日の渋谷区の天気を教えて」とiPhoneに話しかける。Google Homeには「Ok Google, 千代田区の喫茶店を教えて」と話しかける。この「Hey, Siri.」や「Ok Google」がトリガーとなる。
2017年の時点ではAmazon EchoとGoogle Homeがテレビから発せられたトリガーワードに反応して起動していた(*1)。2019年、Googleについては誤ってトリガーされることがあるとIndependentが報じた(*2)。The New York Timesによれば、TheGuardianとBloombergNewsがそれぞれ、「セックスをしているカップルと麻薬取引をしている犯罪者を不注意に記録したSiriの録音とAlexaのアクティベーションを聞いた」と内部告発者が述べたと報じた(*3)。
2019年8月21日時点のThe New York Timesの記事によると、Google, Apple, Amazonは「録音の1パーセント未満が人間によるレビューの対象である」と公に述べているとした。その後AppleとGoogleは、人間によるレビュープログラムを一時停止し、AmazonはAlexaアシスタントを拡張して一連のプライバシー管理を組み込んだことを述べた。
その他の技術と同じく、AIアシスタントも完成しておらず、完成形がない。変わり続け、アップデートが繰り返される。自宅内やプライベートなスペースでの会話を録音盗聴されるリスクを減らしたいのであれば、AIアシスタントデバイスを一切使用しない選択がベストであると言える。
しかしやはり、AIアシスタントは便利な存在だ。うまく活用して、生活をより豊かなものにしてはどうか。
以下は2020年12月現在のGoogleアシスタント、Siri, そしてAlexaのプライバシー設定に関する設定方法や内容だ。いずれも各社の公式発表である。
Google「Google アシスタントのプライバシー保護に関する取り組み」
https://japan.googleblog.com/2019/10/assistant-privacy.html
Siri「Siri のプライバシー保護とグレーディングについて」
https://support.apple.com/ja-jp/HT210558
Alexa「Alexaのプライバシー設定の管理」
https://www.amazon.co.jp/gp/help/customer/display.html?nodeId=GPGRYRZ494GDFPZ2
Googleは2018年、BERTと呼ばれる自然言語処理のモデルを開発した。BERT モデルは単語の前後の単語を見ることで、その単語の完全な文脈を考慮することができ、特に検索クエリの背後にある意図を理解するのに役立つ。彼ら(と言う主語が適するのかはわからないが)は、自分自身で学習を重ねる。
1年前後以内には、自学自習を重ねるAIアシスタントと会話をしている方が、勉強をしない人間と話しているよりも面白い、といった感情を抱く人も出てくるだろう。
映画で、開発にのめり込みすぎて開発対象やロボットへ偏った愛情を注ぐマッドサイエンティストなどが描写されることがあるが、この現象はすでに起きており、今後はAIアシスタントなどを利用する一般の人間にも同様の現象が起こるだろう。生身の人間よりもAIの方に強く愛情を注いでしまう人間。『her / 世界でひとつの彼女』や『エクスマキナ』の世界は、夢物語や作り話ではなく、起こりうる。
世界には数々のスタートアップがAIアシスタント機能を活用して新事業を興している。ここでは世界の面白いスタートアップ企業を5社紹介する。
AIアシスタントにより節約・支出・投資を自動で一気通貫して可視化できる新しいPFM(Personal Financial Management)サービス
https://sunryse.co/app/startups/r_hfiublytjtnydrj
料理を手軽に!AIアシスタントとの連携を駆使して料理の総合的なサポートを提供するサンフランシスコ発のスタートアップ
https://sunryse.co/app/startups/r_tzhqyeftpbrppge
キャラクターと話して学べる!子供向け英語学習アプリを展開するアメリカ発スタートアップ
https://sunryse.co/app/startups/r_qsyuxziqectnpzc
テキストまたはオーディオベースで顧客とのコミュニケーションを代行するAIアシスタント
https://sunryse.co/app/startups/r_jwxayhqkyumpcmq
神経科学を利用して最善の仕事環境へのヒントを提案 エンジニアリングチーム向けAIアシスタント
https://sunryse.co/app/startups/r_xngtqdozaevucud
特に最初の3社については、実際にぶつかった課題をベースに開発創業に至っていることが特徴的である。AIアシスタントだけではなく、スタートアップ企業の新規事業の多くが「こんなこといいな、できたらいいな」が形になっており興味深い。
AIアシスタントは私たちを助けてくれる存在として今後もアップデートを続ける。未来の姿に期待したい。
参考:
https://blog.google/products/search/search-language-understanding-bert/
https://blog.google/products/search/search-language-understanding-bert/
*1:
https://www.wired.com/2017/02/keep-amazon-echo-google-home-responding-tv/
*2:https://www.independent.co.uk/life-style/gadgets-and-tech/news/google-home-recordings-listen-privacy-amazon-alexa-hack-a9002096.html
*3:
https://www.nytimes.com/2019/08/21/technology/personaltech/alexa-siri-google-assistant-listen.html