5Gの可能性:次世代通信の今後とシンガポールでの成功例

私たちの生活は、次世代通信技術の5Gの導入でどのように変わるのだろうか。シンガポールの通信事業者の事例から、医療分野における活用の可能性などを紹介する。
ヘルスケア コミュニケーション

世界中が新型コロナウイルス感染症に対応する中で、通信業界は地域社会をサポートするうえで非常に重要な役割を果たしている。強固な顧客基盤やICTスキル、そして高い技術力をもつ通信事業者は独自のポジションを築き始めており、顧客に対して、インターネットというインフラを提供する義務がある。

すでに業界内では、より広い帯域幅に対応するためにサービスをアップグレードしたり、経済的に困難な状況にある個人や企業に割引サービスを提供したり、支払いの期限を延長したりすることで、リモートワークや学習をサポートする動きが加速している。

例えばシンガポールでは、サーキットブレイカーと呼ばれる外出制限中において、国内大手通信会社の「M1」がブロードバンド回線を増強した。そしてより多くの人々の生活をサポートし、外国人労働者の住居が集まる地域でのサービス強化にも注力している。現在多くの中小企業はDX(デジタル・トランスフォーメーション)を進めており、事業の継続性を高めることに重点を置いている。

このような背景において注目したいのが、次世代通信技術の5Gである。シンガポールの通信事業者は、5G導入の最前線に立っている。5Gは企業と消費者の双方に様々な価値を提供できる大きな可能性を秘めている。

1.シニア・中小企業向けの通信サポートプログラム

新型コロナによるパンデミックの影響をうけ、多くの企業で在宅勤務が導入されている。今後外出の規制が緩和されても、在宅勤務は一般的な働き方として定着する可能性が高いと言えるだろう。人々がスムーズにワークスタイルを変えられるように、通信事業者は顧客のニーズを理解し、スムーズなインターネットへの接続と高い信頼性を構築するように努力しなければならない。

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さらに通信事業者は、携帯電話やブロードバンドの利用にかかる費用を補助したり、低所得者などをサポートする役割も果たし始めている。最近ではシンガポールの情報通信メディア開発庁「IMDA」 が「Seniors Go Digital」プログラムを導入した。これは、シンガポールのシルバー世代のデジタル体験をサポートするために、携帯電話の使用料金を補助する制度である。

シルバー世代だけではなく、シンガポール経済の重要な原動力ともいえるのが、数々の中小企業である。中小企業の多くは遠隔地で効率的に作業をするために必要なリソースが不足していることが原因で、事業継続において様々な問題を抱えている。

そこでシンガポールの「M1」は「IMDA」と提携し、助成金を受けながらリモートで仕事ができる手頃な価格帯のビジネスソリューションを開発した。中小企業は継続的な支援を必要としているため、2020年以降も様々なサポートサービスを展開する計画を打ち出している。

2.5Gがもつポテンシャルと、医療分野における活用

シンガポールにおいて、5Gの導入はまだ始まったばかりである。

5Gは超高速で大容量の通信ができ、同時に多数の接続も可能にする。しかしそれ以上にエキサイティングな可能性というのが、インターネット接続デバイスをサポートする点に秘められている。5Gは理想的なスマートシティを構築するための重要なマイルストーンでもある。

ASEANによると、5Gは通信事業者にとっても大きな可能性を秘めているという。2025年までに5Gの技術は消費者の収入を6~9%ほど向上させ、企業の収入も約18~22%向上させるという試算が発表されている。

これらを実現するためには、通信事業者は技術革新を進め、適切な企業とパートナーシップを構築する必要がある。2020年の初頭に「M1」は「シンガポール・イノベート(SGInnovate)」と提携しており、スタートアップ企業が5G技術を製品やソリューションに活用できるよう、技術面などでサポートしている。

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5Gの活用で大きな期待が寄せられているのは、ヘルスケアの分野である。オンライン診療や遠隔手術、健康状態のモニター化などを通じて、様々な病気の治療をサポートしたり、経過を管理したりできるアプリケーションの開発が進んでいる。

例えば、Bluetoothで電話とペアリングできる心電図モニターは、医師が患者情報を閲覧できるクラウドサーバーのデータベースに直接信号を送ることもできる。

5Gの導入は、帯域幅の使用量を増やせるだけでなく、様々なフィードバックをほぼリアルタイムに送信することもできる。ごくわずかにも見える秒数の差は、結果的に大きな違いを生み出すだろう。企業は5Gを活用することでゲームチェンジャーになりえる可能性があり、5Gがもつポテンシャルはまさに無限であると言える。

現在のように政府や医療従事者が新型コロナに対応するために奔走している姿をみると、5Gや新しいアプリケーションが果たせる役割というのは、今後さらに大きくなるのではないかと予想している。

翻訳元:https://e27.co/how-5g-will-empower-startups-and-smes-in-the-new-normal-20200825/

記事パートナー
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執筆者
土橋美沙 / Misa Dobashi
Contents Writer
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