人気配信アプリ「17LIVE」が6000万人のユーザーを獲得できた理由

2015年に台湾で始まり、日本でも絶大な人気を誇る配信アプリ「17LIVE」。全世界で6000万人以上のユーザーを抱えるサービスが、たったの5年間でどのように大躍進を遂げたのか。その戦略をインタビュー形式で解明する。
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2015年に台湾で創業したM17 Entertainment Ltd.は、台湾で有名なポップシンガー、Jeffery Huang氏がデザイナーを努めた人気ライブストリーミングアプリ「17LIVE」を運営している。

17LIVEは、人工知能や機械学習、リアルタイムインタラクションなどの技術を駆使して、様々なテーマの配信(エンタメ、ゲーム、コミュニティトークなど)に対応している。

すでに、世界各地にその事業を拡大しており、2021年現在では創業地である台湾に加え、香港、日本、シンガポール、アメリカ、マレーシア、その他東南アジア、そして中東など、複数箇所に拠点を構えている。 そのユーザー数は全世界で6000万人を超えており、今や世界でも有数のライブストリーミングプラットフォームだ。

しかし、わずか5年という短いスパンで、同社はどのようにしてこれほどのユーザーを獲得できたのだろうか?

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今回e27は、M17 Entertainment Ltd.のCEO(台湾及び東南アジア)であるAlex Lien氏に、17LIVEの顧客獲得戦略についてインタビューを実施した。

以下質問と返答。

1. 17LIVEはどのように質の高い潜在顧客を発掘しているのでしょうか?何か特別な手法やツールは利用していますか?

17LIVEはオープンプラットフォームであり、コンテンツを重視するという理念を掲げています。政治、音楽、エンタメなどあらゆるテーマの配信を受け入れることで、幅広い年齢層のユーザーを満足させられるのです。

また、私たちはソーシャルメディアでのライブ配信に力を入れており、現代のユーザーに対してより魅力的なアピールを実施しています。

私たちの拡大戦略はLIVER(17LIVEで配信をする人、出演者。)を積極的に発掘し、受け入れることから始まります。

例えば、台湾で選挙があった際、出馬する全ての政党が我が社のアプリを使ってライブストリーミングを行い、トラフィックの増加に貢献しました。 また、最近では80歳のLIVERも誕生し、新しい層(高齢者)の獲得に一役買っていると言えるでしょう。

2. 潜在顧客の獲得という面では他に施策はありますか?

17LIVEでは、音楽をスタートにして、様々なコンテンツに注力する戦略を採用しています。ちなみに、音楽関連では世界中に5000人以上のLIVERがいる状況です。

私たちが音楽を起点にコンテンツを組み立てるのは、音楽がライブ配信と高い融和性を持っているからです。 音楽はアーティストやインフルエンサーとの繋がりも強く、アメリカや香港、日本などでは、人気のアーティストとコラボした企画なども実施しています。

台湾でも、2020年8月に大型プロジェクト「Flash Music Events」が毎年開催で始まりました。 このイベントではLIVER達は17LIVE公式が主宰する台湾ツアーコンサートに出場する機会を得ることができます。台湾のあらゆる場所で素晴らしい才能を持った新しい人材を発掘するのです。

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この「Flash Music Events」の最大の特徴は、LIVERの選抜イベントとライブストリーミングを組み合わせたことにあります。 単なるオンラインコンペではなく、素人のLIVERが17LIVEの配信でパフォーマンスを行い、その姿をファン(フォロワー)が鑑賞することで、オンラインでも両者が直接交流できる機会をより多く提供することができるのです。

また、私たちは台湾の若手アーティストやバンドに特化した「Golden Feature Award (GFA)」というイベントも開催しています。このGFAは2017年に始まって以来、多くの若者達に大きな夢をもたらし、型にハマらない自由な表現で才能を発揮する機会を与えてきました。 このGFAはフォロワーから直接応援を受けて大きなステージに立つことができる年に一度のチャンスなのです。

さらに、アメリカではヒップホップスターFlawless Real Talkとコラボしたイベントを実施したり、世界的に有名なギタリストMiyaviのコンサート、日本における大規模オンラインイベントなど、多くのミュージシャン達と配信イベントを実施してきました。

もちろん私たちがプッシュするのは音楽だけではありません。政治や芸能などあらゆるテーマのライブが私たちのコンテンツです。 例えば、日本では、有名な俳優の吉田鋼太郎さんなどと契約し、コンテンツの充実化を図っています。

3. 有料/無料流入の割合、インバウンド/アウトバンドの割合はそれぞれどれくらいでしょうか?

現状、約半数のユーザーがペイドマーケティングによる施策で流入してきています。 とはいえ私たちのマーケティング戦略は、一般的なアフェリエイトネットワークだけでなく、オーガニックのトラフィックにも注力しています。実際のところ、従来のビジネスとは異なり、かなり多くの流入がオーガニックで得られたものなのです。

私たちのB2Bパートナー(例えばMoMoやBurt’s Beesなどのブランド)は、17LIVEのオーガニック流入獲得に大きく貢献しています。 また、オフラインのイベントやコンサートも効果的です。例えば、VOGUEと共同で開催している「台北ファッションウィーク」や、台湾で最も影響力の強いテレビ局TVBSが新北市で開催している「クリスマスランド」などのイベントがそれに当たるでしょう。

ミュージシャンや有名人などの効果はトラフィックに大きな影響を与えます。例えば、「Golden Feather Award」ではヒップホップスターのOSN Gaoさんのパフォーマンスでかなり大きなオーガニックトラフィックを獲得することができました。

4. 潜在顧客の誘致ではどのようなステップを用意していますか?コンテンツマーケティングも実施していますか?

私たちが行っている施策の一部をご紹介します。

  1. オリジナルコンテンツの企画

  2. B2Bパートナーを意識したコンテンツの企画(オーガニックトラフィックの獲得)

  3. ストリーマー自身の宣伝力を活用(SNSなどで17LIVEのコンテンツを拡散)

  4. オフラインでのフラッシュコンサート

5. 競合他者と比べて、顧客獲得における戦略の違いはありますか?

私たちの強みは以下の点にまとめられます。

グローバルな視点: 多様なコンテンツとグローバルイベント、そして宗教や環境に囚われない自由な発想が世界中でユーザーを獲得できる理由です。

グローカル: 徹底的にローカライズされたコンテンツを作成し、これをグローバルなコンテンツとしてヒットさせることができます。

コンテンツクオリティ: ライブ配信サービスでありながらオフラインイベントも実施し、満足度を高めています。

プロモーション戦略: 社内のPRチーム、コンテンツチームがLIVER達のプロモーションをサポートしています。

6. 顧客獲得のために紹介システムやロイヤリティプログラムを活用していますか?

私たちは、お客様に合わせてカスタマイズされた独自のロイヤリティプログラムを展開しています。特別なチームがリワードに応じて獲得できるグッズなどをデザインしており、ブランドに付加価値を与える役割をになっているのです。

7. 無料会員を有料会員に変えるために、実施していることはありますか?

最も重要だと考えていることは、お客様の満足度とニーズです。 例えば、機械学習技術に基づいたAIおすすめサービスによって、ユーザーは好きなコンテンツを難なく見つけられるような仕組みを構築しています。

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また、ロードマップにおけるCVRをあげるため、オンライン(時にはオフラインも)のイベントも多数実施しています。

8. 解約を避け、顧客を維持するためにどのような戦略を採用していますか?

17LIVEはコンテンツの質で顧客を維持するよう、戦略を構築しています。ユーザーに対してより面白いコンテンツを提供することが私たちのミッションなのです。 私たちはコンテンツこそがユーザーを惹きつける最も大事なパワーであると考え、LIVERたちが生み出すコンテンツのクオリティアップに注力しています。

また、17LIVEではLIVERを中心とした強固なコミュニティ作りも重要です。我が社の事業開発チームでは、公式でLIVERを育て、彼ら彼女らが17LIVEの機能やサービスをフル活用してファンを維持することを手助けしているのです。

9. 顧客獲得にかかるコスト(CAC)はどれくらいでしょうか? またCACはどのような要因で影響がでますか?

私たちはまず、ターゲットを知り尽くし、どのような投資をどこに行うか、それを調べるためのマーケットリサーチを行います。

我が社のCACは、米国でもトップクラスのクリエイターと仕事を共にしてきた、専門家が担当しています。

また、CACに影響を与える最も大きな要因はコンテンツの面白さとLIVERの存在です。もはやこの二つは私たちのビジネスにおいては欠かせないものになっているのです。

以上

翻訳元:https://e27.co/how-5-year-old-live-streaming-app-17live-acquired-50m-users-globally-20201228/

記事パートナー
アジア各国のスタートアップシーンを世界に発信するオンラインメディア
執筆者
滝口凜太郎 / Rintaro TAKIGUCHI
Researcher&Writer
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