「もっとクリエイティブなスキーウェアを」Dinoski - GREEN WORK HAKUBA 3 登壇スタートアップインタビュー

リサイクルペットボトルを活用したサステナブルなキッズ用アウトドアウェアを提供するDinoskiで「キング・オブ・ザ・ワイルド」と呼ばれる役職を務め、ブランディングやクリエイティブのディレクションを担当するWill Chapman氏へのインタビューを紹介する。
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白馬の雄大な景色に囲まれてサーキュラーエコノミーを学ぶリゾートワークプログラムGREEN WORK HAKUBA vol.3に登壇したSUNRYSEはサーキュラーエコノミーに寄与するソリューションを展開するスタートアップ全7社を紹介した。本記事ではGREEN WORK HAKUBA vol.3に向けてSUNRYSEが行ったインタビューの一部について紹介する。

今回取り上げるのはリサイクルペットボトルを活用したサステナブルなキッズ用アウトドアウェアを提供するDinoski へのインタビューの様子だ。インタビューに応じたのはWill Chapman氏。Dinoskiにて「キング・オブ・ザ・ワイルド」と呼ばれる役職を務め、ブランディングやクリエイティブのディレクションを担当する。

Dinoskiが解決しようとしている課題は何ですか?

僕たちのミッションは家族が素晴らしいアウトドアを楽しめるようにすることです。二つの方法で解決しようとしており、1つ目は子どもたちをPCやスマホのスクリーンから解放して、外で遊べるようにすることです。スクリーンタイムは大きな問題となっており、子どもたちが成長する過程で多くの不安や問題を引き起こしています。2つ目は、若い家族にとって「環境問題」をより身近なものにしたいと考えています。

Dinoskiが始まったきっかけですが、僕たちは子ども用のアウトドアウェアには想像力が欠如していると思いました。これまでアウトドアウェアは機能的なものが多い一方で、楽しさに欠けていたため、「楽しさ」と「機能」を組み合わせウェアを作りたいと考えました。最初は動物をテーマにし、スキーウェアを作りました。スキーウェアは市場における最大のギャップだと考えたからです。

3種類のキャラクター「恐竜」「ライオン」「ウサギ」のスキーウェアを販売したところ、多くの人々が気に入ってくれたため、今ではコートやスノースーツ、トラックスーツ、スイムウェアを作っています。今後は長靴やパドルスーツ、ジャケットなども発売予定です。

僕たちが特に大切にしているのは「サステナビリティ」です。商品はすべてリサイクルされたペットボトルから作られています。それから商品を購入するたびに、Tree Appという会社と協力して、新しい木を1本植えています。僕たちは、商品をプラスチック製の包装に入れてしまうと、せっかくのサステナビリティの取り組みが無駄になってしまうと思い、独自で生分解性のある袋を作ったり、ギフトボックスも環境にやさしいものを提供するようにしました。このように、最初から最後まで環境に優しいことを心がけています。

さらに、商品を販売し始めた時には、使われなくなったスクールバスをアメリカから輸送して、移動式ショールームとして使用していました。昨年のパンデミックの影響でイギリスでは移動が難しくなりましたが、このバスを使って何かできないかと考えました。僕たちはもう移動式ショールームを使う必要がなくったので、かわりに家族がバスをレンタルできるように変え、アドベンチャーキャビンとして提供するようにしました。今は、使われなくなった古いスクールバスを、家族向けの宿泊施設として再利用しています。これらは僕たちが伝えたい冒険的な側面と、推進したいアウトドア・ライフスタイルを実現することができます。またアップサイクルの重要性について知っていただく機会にもなります。

(出典: https://www.dinoskiwear.com/

ビジネスモデルについて教えてください。

2つの主要な収益源があります。1つはアパレルです。もう1つはアドベンチャーキャビンで、これは比較的新しい取り組みですね。アパレルは、当社のウェブサイトから直接販売しています。また小売店にも販売しています。イギリスではセルフリッジ、ハロッズ、ジョン・ルイスなどと提携していますが、世界中の主要な小売店とも提携しています。現在、フィリピン、グアダルーペ(スペイン)、ドバイ、アメリカ、カナダで展開しています。

アジアは僕たちにとっても大きな市場です。今は、韓国と中国にしか販売店がありません。ですから、日本のみなさんともぜひインパクトを作りたいと思っています。事業やミッションに共感してくださる人や場所とぜひ出会いたいですね。僕たちは卸売りもしますし、直接販売もします。

アドベンチャー事業は、廃校になったスクールバスを購入します。まだ事業を始めてから長くないですが、2018年に立ち上げて以来、3年連続で収益を倍増させていますし、来年も同じようにしていけそうです。僕たちのメッセージやブランドのポジショニングは、人々の共感を得られていると思うと嬉しいです。

(出典: https://www.youtube.com/watch?v=cShG8T1jooc

サーキュラーエコノミーとの関連性について教えてください。

私たちはほとんどすべての商品をリサイクルされたペットボトルから作っています。これは中国に拠点をおくFenceや、世界的に有名なREPREVEなどの企業と提携して行っています。これらの会社は、使用済みのペットボトルを回収し細かく砕き、溶かしてチップにし、それを使って繊維を作ります。この糸は、さまざまな用途に使うことができ、僕たちの場合は、防水のスノースーツやコート、水着などです。また、使われなくなったウェアを回収して新しい家庭に届けるPrelovedサービスも行っています。

サステイナビリティは、環境に優しい生地を使うだけではなく、製品のライフサイクルをいかに長くするかということも重要です。衣類の多くは、ファッション業界が最も悪い原因のひとつですが、衣類の多くは埋め立てられてしまいます。子どもは成長するので服を着なくなります。僕たちの服は、子どもの成長期間を考え2年は持つように作られていますが、実際の品質はそれよりもずっと長持ちします。子どもが着なくなった服を回収し必要に応じて服を修復し、それを楽しんでくれる新しいお客さまを見つけたらいいのでは、と考えました。衣類を返送していただくと、クーポンをお渡し、私たちは必要な方法で修復し、その服を使いたい新しい家庭を探すのです。

現在、最も深刻な問題のひとつは森林破壊です。新しい木を植えることで、カーボンオフセットに取り組む企業がたくさんあります。Tree Appとは、コートやスノースーツが1枚売れるたびに、新しい木を植えるための寄付を行っています。私たちのようなブランドにとっては非常に簡単なことなので、もっと多くのブランドがこのような取り組みに関わるべきだと思います。

またアップサイクル事業にも取り組んでおり、古いスクールバスを活用して人々が予約できるアドベンチャーキャビンにしています。私たちのスクールバスはどこにも行きません。公害もありません。バスを所定の位置に設置し、家族が宿泊できるキャンプ施設として提供します。僕たちが伝えたいアウトドアやサステイナブルなライフスタイルを実現でき、とても人気があります。

今後の計画は?

冬物のコート、スノースーツ、トラックスーツなどを発売し、最近では、スイムウェアを発売しました。今は、スイムウェア、ラッシュベスト、タオル、帽子などがあります。最近僕たちは、新たなプロダクトラインを展開し、工場に生産をお願いしたところなのですがレインスーツや防水のスプラッシュスーツ、長靴、ジャケット、トラックスーツ、ヘルメットカバーなどを準備しており、年末に発売する予定です。とても楽しみですね。また、NASAとのコラボレーションも実現します。これは限定品で、かなり人気が出ると思います。来年にはその先の大きな計画もあります。

GREEN WORK HAKUBAの参加者に伝えたいことはありますか?

私は、私たちのような小さな若いブランドがいかに重要であるかを伝えたいと思います。小さいブランドだからこそ柔軟に動けますし、自分たちがやっているようなことをやりやすいのです。衣類をよりサステイナブルなものにできます。また、Tree Appのような会社と協力して、新しい木を植えたり他の企業と協力して製品のライフサイクルを延ばすこともできます。ですのでブランドがこのような活動をできない理由があまりありません。確立されたブランドで、より多くのプロセスと大規模なチームを擁しているところは、変化を起こすのに時間がかかりますが気候変動を抑制するためには、私たち全員がこれらのことを行う必要があります。こういったアクションを行うことで最終的に政府にプレッシャーをかけることができるのです。

大きな変化は、長期的にはトップダウンで行われる必要があると感じています。例えば、家族や個人に対して「プラスチック製品の購入をやめよう」と言うのは良いことですがそもそもプラスチックがスーパーに置かれているとしたら、それを使う方が便利ですよね。だから全員が辞めることはできないのです。政府がスーパーでのプラスチック使用を禁止し、そのようにして止めなければならないのです。しかしブランドには声があります。私たちはこれらの問題を共有できますし、これらの問題をより身近なものにすることができます。自分たちに何ができるのかを知ってもらえますし、他の人たちにとってのお手本になるかもしれないのです。Dinoskiを運営してきたわずかな経験ですが、それを伝えたいと思います。


表題画像:Photo by Go Montgenevre on Unsplash (改変して使用)

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執筆者
井田 新 / Arata Ida
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