ペルーのスタートアップ:盛り上がりをみせるエコシステム

ラテンアメリカ(中南米)のスタートアップシーンで、ペルーに注目が集まり始めている。充実した政府の支援プログラムとともに、課題やその現状を探る。
VC/CVC

Contxtoーラテンアメリカのスタートアップエコシステムにおいて、ペルーは「ダークホース」として存在感を強めている。

ペルーには「ユニコーン」と呼ばれるようなスタートアップがまだ誕生していない。しかしオンラインコース事業を手がける「Crehana」や「Laboratoria」のように、有名なテクノロジー関連のスタートアップががいくつか頭角を現し始めている。市場規模をみてみると、ペルーはラテンアメリカのなかでチリを抜いて、5番目に人口の多い国である。

隣国と比べると、ペルーは政治や社会が比較的安定している点も強みになる。さらにペルー政府は様々なプロジェクトを立ち上げ、志をもつ起業家たちをサポートする取り組みを進めている。

ほかにも「ペルーシード&ベンチャーキャピタル協会(PECAP)」が主催する「ペルー・ベンチャーキャピタル・シリーズ」といったアクセラレーションプログラムなど、スタートアップへの支援は充実しつつある。

「ペルー・ベンチャーキャピタル・シリーズ」は2020年8月中旬に5日間のオンラインイベントを実施し、最新のスタートアップ動向やベンチャーキャピタルシーンを分析した。8月後半にもプレゼンテーションやネットワーキングの機会が提供される予定である。

1.盛り上げりをみせるペルーのスタートアップシーン

ペルーのスタートアップエコシステムを評価すると、努力の面ではA評価をつけたいと思う。

政府が運営を手がける「Innóvate Perú」や「Startup Perú」は、スタートアップの成長を加速させるために資金を提供する素晴らしい取り組みである。さらに当局は2019年、ペルーのスタートアップをサポートするために、新たなファンドとなる「fund of funds」を立ち上げた。

「ペルーシード&ベンチャーキャピタル協会(PECAP)」が2019年に実施した調査によると、同年1月から9月にかけて、ベンチャーキャピタルを通じた資金調達の額が前年同期比で24%増加したという。

さらに2020年においては、複数のペルーのスタートアップが投資ラウンドに応じて資金を実際に調達している。「Contxto」のデータベースを分析してみると、オンラインコース事業を手がける「Crehana」と持続可能な食品開発に取り組む「Kai Pacha Foods」が、未公開の金額で資金調達を行っていることが判明した。ほかにも多くのスタートアップが様々なプログラムを通じて資金を調達し、成長を加速させている。

2.ペルーのスタートアップが抱える課題

順調な盛り上がりをみせるペルーのスタートアップシーンだが、その一方で課題もある。2019年に同国のスタートアップが実施した資金調達の大半は、エンジェル投資家からのものであった。また、政府が資金を提供するプログラムのほとんどが、アーリーステージの企業のみを対象としている点にも留意したい。

プロジェクトを展開するために、外部からの資金調達や市場に頼り続けるサイクルを生み出してはいけない。企業が成熟しスケールアップを望むようになってはじめて、エコシステム全体がVCの存在を必要とするようにならなくてはいけない。

新型コロナウイルス感染症の影響をうけ、ペルーのスタートアップにも変化が求められている。引き続き最新の動向をウォッチしたい。

翻訳元:https://www.contxto.com/en/events/experts-peru-startups/

記事パートナー
ラテンアメリカのスタートアップシーンの情報をカバーする、メディア・データカンパニー
執筆者
土橋美沙 / Misa Dobashi
Contents Writer
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