eスポーツ(eSports)とは、コンピューターゲームの対戦競技だ。ゲーマー同士の対戦であり、リーグ戦形式のトーナメントもあれば、個人選手によるトーナメントも存在する。
2018年のeスポーツ視聴者は3億8000万人、その中には熱狂的な愛好家が1億6500万人含まれている。アメリカでは50以上の大学がThe National Association of Collegiate Esportsに所属している。
日本にはかつてeスポーツ協会が存在していたが、現在は一般社団法人eスポーツ連合に合流。一般社団法人eスポーツ連合は都道府県対抗eスポーツ選手権を主催するなど普及に努めており、日本のeスポーツの発展に向けて経済産業省と連携して全国各地でセミナーを開催するなど、精力的に活動している。
eスポーツではゲームを通じて競技や大会を実施できる。ゲームは世界で急速に成長しているエンターテイメントのひとつだ。ゲームはオンライン上で、国や場所を超えてプレイすることができるため、COVID-19で多くの人が外出を控えなければならない状況においても楽しみ続けることのできるエンターテイメントでもある。
収益は年間9%以上増加しており、世界のビデオゲーム市場の収益は2022年までに1900億ドルを超える予想が出ている。
eスポーツの収益は、2018年には8億5600万ドルであったが、2022年までには約18億ドルにまで成長すると見込まれている。
eスポーツは多額の金が動く。その産業構造と流れは身体競技のスポーツと同様だ。eスポーツを取り巻く産業の構造を分解すると、スポンサー、広告、チケット、グッズ、著作権、放映権のほか、関連機器販売(ゲーミング製品)、環境整備、イベント施設、練習施設、宿泊施設、選手・ゲーム開発者・解説者など専門家の育成がある。
eスポーツはテレビゲームあるいはオンラインゲームの試合だが、オンラインだけでなくオフラインでの集客も見込むことのできる産業だ。
海外のeスポーツトーナメント戦では、野球やサッカーの試合などがドームで行われるのと同様、お椀型のスタジアムのような会場で行われ、数人の解説者が解説を行い、観客が大いに盛り上がる。その様子はまさに「スポーツ競技」である。
プレイヤーや観客、司会者などが同一会場に集合することなく、ほぼオンラインで実施される大会もある。観客への配信はYouTubeなどの動画配信サービスが使われる。
オンライン実施の場合、愛好家たちは高性能な通信関連機器や映像・音響機器を買い求める。当然、大会の観戦チケットも販売され、主催者側は収益を得る。
オフライン実施の場合、イベント会場、会場内でのグッズ販売、そこまでの移動手段、周辺宿泊施設や飲食店なども恩恵を受ける。オンラインで同時開催を実施すれば、主催者側がエルことのできる収益の幅は広がる。さらに大量・多額の広告も動く。
従来の「スポーツ」や、アーティストのライブなどと同様の仕組みと構造で、金や仕事が動く。金が動くポイントは、以上だけではない。計測しきれない様々な場所や要所で、カネ・モノ・ヒトが動く。
オンラインあるいはオフライン、どちらで開催しても大きな金が動き、周辺産業へのメリットがある。オンラインを活用すればCOVID-19など感染症流行のさなかでもほぼ通常通りに実施できるため、感染症の影響を受けずに発展できる点も強みと言えるだろう。
また「スポーツ」愛好家の裾野を広げる多様性のあるスポーツであると言える。
eスポーツ分野に取り組むスタートアップ企業も存在しており、以下に引用している韓国のプラットフォームの創業者はForbesからも注目されている起業家だ。
https://sunryse.co/app/startups/r_zggyfwryaohojfd
「日本人で初めて“プロゲーマー”と言う職種を築いたプロ格闘ゲーマー」は梅原大吾氏だ。同氏の初の著書によると、彼の経歴は以下である。(以下は引用)
「1998年、17歳にして世界一の称号を獲得。一時ゲームから離れていた3年間で、麻雀の世界でもトップレベルとなる。2010年4月、アメリカの企業とプロ契約を締結。同8月「世界で最も長く賞金を稼いでいるプロ・ゲーマー」としてギネスが認定。「背水の逆転劇」と呼ばれる試合の動画再生回数は全世界で2000万回超。その勝負哲学は、ゲーム以外の世界からも称賛を受けている。」
日本のプロゲーマーとして、ときど氏の知名度も高い。2018年には日本の放送局である毎日放送(MBS)の番組『情熱大陸』が同氏を取材、放送した。同番組のホームページに掲載されている紹介文章は以下である。(以下は引用)
「1985年沖縄生まれの横浜育ち。ご褒美のゲームソフト欲しさに勉強し、名門麻布中学・高校を出て東京大学教養学部理科1類に入学。科学者を志して大学院に進むも2010年中退しプロゲーマーの道へ。海外で活躍する伝説的存在の梅原大吾らと共に、世界の大会を席巻、海外のファンも多い」とある。
茨城県で2019年、いきいき茨城ゆめ国体に合わせて、全国初となる都道府県対抗によるeスポーツ大会「全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2019 IBARAKI」が開催された。
2020年12月には、二度目の開催となる「全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2020 KAGOSHIMA」が開催された。
これらの大会はどちらも賞金が発生していない。プレイヤーたちは、名誉や腕試しなど、それぞれの理由と目的の達成のために競技大会に参加した。
日本のeスポーツエコシステムが発展するためには、eスポーツプレイヤーが競技で生活できるようになることが重要なポイントではないだろうか。eスポーツは産業として成立し、世界のeスポーツシーンでは多額の金が動く。日本のプロゲーマーは世界の大会に出場し、日本企業ではない外国企業とスポンサー契約を行っている。それで良いのだろうか。
日本企業は素晴らしいゲームを作り、知名度の高いゲームを次々と世界に浸透させたが、日本のeスポーツやeスポーツプロプレイヤーが成長するエコシステムの成長は、諸外国と比較すると遅い。
日本のプロゲーマーたちは少々複雑な仕組みの中でプレイしている。
端的に説明すると、日本の景品表示法により、日本のゲーマーはeスポーツ大会やゲーム大会で勝利を収め、優勝や準優勝など、高額な賞金がつく順位にランクインしても「賞金を受け取ることができない」場合があるのだ。
ここでは細かい説明は避ける。一般社団法人eスポーツ連合(JeSU)の説明のページを読んでいただきたい。結論として、JeSU公認プロライセンス制度を保持しているゲーマーであれば、高額賞金を仕事の報酬として受け取ることができる。すなわち、JeSU公認プロライセンス制度を保持していないゲーマーは、海外などで主催される、賞金が数十億にものぼる大会で優秀な成績を収め、賞金を受け取る権利を手にしたとしても、その金を受け取ることができない。
一般社団法人eスポーツ連合(JeSU)が現在景品表示法に対してどのようなアクションを起こしており、今後どのようなアクションを起こす予定で検討されているのか同団体のホームページで確認を試みたが、記載はなかった(2021年1月現在)。
さらに同団体は、13歳以上 15歳以下で義務教育課程を修了していない者を対象とするライセンスを発行しており、「JeSU公認プロライセンス規約」において「ジュニアライセンス保持者は、(中略)予め賞金(報酬)を受領する権利を放棄する」と定めている。
eスポーツは基本的にオンライン上で対戦することから、国籍や言語の壁を超えて競技が成立することが多い。
プレイし続けるに際して、集中力やコントローラーさばき、指や手の動き、座り続けることのできる体力などが重要な要素になるが、ゲームの世界の中では、男性が女性キャラクターとしてプレイすることも、女性が男性キャラクターとしてプレイすることも可能だ。持って生まれた身体的な特徴や自認している性別、対外的に使用している性別を超えることができる。
あいにくeスポーツは、全人類がプレイできるわけではない。2021年時点でのeスポーツは、視覚・聴覚、そしてコントローラーを操ることのできる能力がなければプレイできないだろう。
しかしながら、テクノロジーは発展し続けている。今後は視覚や聴覚をサポートすることのできる製品につながるテクノロジーがうまれるかもしれない。そうすればeスポーツやテクノロジーが多様性のある社会を健全に促進してくれる可能性も高まる。
2020年から2021年にかけて、新型コロナウイルス感染症の流行と拡大も影響し、音楽のコンサート配信や、アメリカ大統領の選挙運動が任天堂のゲーム内で実施されるなど、実世界とゲームが混ざり合った。
2021年以降、ゲームだけでなく映像に関連するカルチャーがより幅広い世代に楽しまれるようになるだろう。これからの進化と発展に目が離せない。
参照:
https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/39144
https://jesu.or.jp/
https://www.pref.ibaraki.jp/shokorodo/sansei/content/esportsproject.html
https://www.cnbc.com/2019/01/20/heres-why-esports-can-become-a-billion-dollar-industry-in-2019.html
https://www.roundhillinvestments.com/research/esports/how-do-esports-teams-make-money
勝ち続ける意思力 世界一プロ・ゲーマーの「仕事術」小学館101新書