Apr 30, 2020
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Insight

Edtech. テクノロジーは子どもの学びにどんな変化をもたらすのか?

近年、急速に教育業界でのテクノロジー活用が進んでいる。その市場の成長と代表的なスタートアップを紹介。
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Edtechとは

「Education × Technology」の造語で、教育業界において、ICTといったテクノロジーを活用してイノベーションを生み出すサービスのことを指す。幼児から社会人まであらゆる世代を対象とした教育サービスだけでなく、教師や教育機関の業務をサポートするサービスも含まれる。

グローバル規模でのEdtech業界への投資は直近10年で急成長している。「Holon IQ」によると、2010年に5億ドルだったVC投資は2019年では14倍の70億ドルに成長しており、特に中国、ヨーロッパ、インドへの投資はここ5年間で急激に伸びている。今後も発展途上国の教育機会の拡大および先進国のテクノロジー開発の推進によって、2030年の教育市場は10兆円に達すると予想されている。

今回は、次の10年で人口が増加すると見込まれている小中高生世代を対象としたスタートアップを紹介しながら、テクノロジーが子どもたちの学びをどのように広げているのか、「教育×テクノロジー」の可能性について考えていきたい。

<引用元:Holon IQ

質の高い教育コンテンツへのアクセス

デバイスさえあれば低価格で質の高い教育コンテンツにだれでもアクセスできるという、物理的な場に囚われない学びの選択肢が広がっている。非営利団体であるが、まずはK-12向けコンテンツ配信サービスの先駆け的存在を紹介したい。

Khan Academy」:創設者である男性がいとこの個別指導を遠隔で行うためにYoutubeにアップした指導動画が「分かりやすい」とたちまち話題になったのがこのサービスの始まり。「誰にでもどこにでも無料の教育を」というモットーに、NASAやMITをはじめとした世界的組織や著名人から支援を受け、寄付とボランティアによって世界中に良質な教育コンテンツを提供している(彼のTED Talkはこちらから)。

都市部と地方の教育格差、慢性的な教師不足といった問題を抱える国においては、オンライン上で学習コンテンツを提供すること自体が大きな価値を持ち、「1人の教師→無数の生徒」によって教室よりも格段に規模の大きい学びの場が形成されることになる。提供されているコンテンツは、子どもが困難を抱えやすい理数系の科目や、大学受験対策のためのコースが多い。

インド発「Doubtnut」:高校受験・大学受験対策ができる理数科目のコンテンツプラットフォーム。受験目標ごとに教科の専門家が作成した豊富なビデオコンテンツが提供されている。ユーザーが疑問に思った問題の写真を撮ってアップロードすると、瞬時に解説ビデオを表示してくれるというシステムも組み込まれている。

「Doubtnut」ユーザーの大半は、教育リソースの少ない地方都市に住む低所得層の学生だという。インターネット環境が万全ではない地域では、オフラインでも利用できるようSIMカードで提供していることもある。

学び手同士をつなぐオンラインコミュニティ

オンラインのプラットフォーム上でユーザー同士の学び合いを24時間体制で実現するサービスも増えている。学習中に疑問に思ったことを投稿すると、他のユーザーや専門チューターが回答してくれるという知恵袋のような形式で、中高生を対象とした家庭学習サポートの要素が強い。この種のコミュニティ提供型サービスは、学習という特定の文脈における「生徒⇄生徒」の双方向的な関係を生み出しているといえるだろう。

ポーランド発「Brainly」 :中高生向けのソーシャルラーニングプラットフォーム。家庭学習に取り組んでいるときに生じた疑問を投稿すると、短時間で他のユーザーから解決プロセスについての詳細な回答を得られるサービス。35ヶ国で月間1億人以上のユーザーが利用しており、ポーランドやロシアでは中高生のシェア率が80%を超えているという。

日本発「Clear」:勉強ノートシェアアプリ。中高生が自分で作成した勉強ノートの写真をシェアすることで、他のユーザーが授業の復習やテスト対策の素材として利用できるようになっている。「ノートをとる、まとめる」という文化が小学校のうちから浸透している日本ならではのプラットフォームであろう。

収益モデルとしてはフリーミアム型が主流で、無料で提供しているサービスもある。ある程度自由度を持たせたプラットフォームの場合は、ユーザー同士の学びの質をコントロールすることも必要だ。例えば「Brainly」では、専門的知識を持つチューターも回答に参加しているほか、良い回答だと認定された数に応じてランク付けされるシステムによってユーザーのモチベーションとサービスの質を保証している。

パーソナライズによる学習効率の最大化

最近、教育系のサービスで「Adaptive Learning(適応学習・個別最適化学習)」という言葉がたくさん使われている。言葉通り、ある学習目標のもとで学習プロセスをパーソナライズすることで、ひとりひとりに合ったベストな学習環境を提供するというものだ。従来の教室場面では、ある特定の分野を学習する際に全ての人が全て同じプロセスで進めなくてはならなかったが、アダプティブラーニングのもとでは、個人の学習到達度合いによって提示されるコンテンツや問題のレベルが異なる。AIが個人の問題解決データを利用して、正解した人にはより発展的な問題を、間違えた人には不足している知識の補完問題を、といったように専門のチューターがついているようなイメージだ。

従来のシステムは選択問題やクイズ形式問題の正誤パターンを分析することによって最適化されたコンテンツを学習者に提示するものが多いが、ここではさらに発展させたソリューション開発に取り組んでいるスタートアップを2つ紹介する。

アメリカ発「Cognii」:選択式問題だけでなく記述形式の問題にも対応した個別最適化モデルを構築している。チャットボットを利用した会話教育法を採用しているため、ユーザーが入力したテキストから不十分な知識や考え方を捉えることが可能になり、問題の正誤パターンからは把握しきれない理解の側面に関するデータを得てアルゴリズムに組み込んでいる。

スェーデン発「Sana Labs」:教育機関や企業が自社の教材コンテンツでアダプティブラーニングを提供できるようにAPI型ソフトウェアを提供している。学習者の回答時間や正誤だけでなく、何を理解している/していないのか、どのような方法で一番理解できるのかといった学習プロセス一連の情報も特定し、教師にデータとしてフィードバックする仕組みになっている。

日本でも「atama +」をはじめとしてAI教材の開発が進んでおり、多くの塾や予備校に導入を始めている。個人の問題解決場面にとどまらず、学校の授業場面といった集団的な学びにおいてもどのような利用可能性があるのか、今後のさらなる展開が楽しみである。

最先端テクノロジーによる学習領域の拡大

最先端テクノロジーは、これまでは体験することが不可能だった新しい世界へと導いてくれる。VRやARを活用した学習は「Immersive Learning(没入型学習)」と呼ばれ、歴史的な出来事や宇宙の世界に身を置いたり、教科書で二次元でしか見ることができなかった化学的な事象を3Dで捉えることが可能になる。

イギリス発「MEL Science」:物理や化学の実験キットとVRプログラム教材を学校に提供してくれるサブスクリプション型のサービスを展開している。実験の内容は学校のカリキュラムに沿っており、教室では実施が難しい実験もVRで体験することで、難しい概念を体感的に深く理解できるようになることを目指している。

ノルウェー発「Sherpa Education」:GPS・AR・ゲーミフィケーションを組み合わせた課題解決型学習プラットフォームを提供している。教師が現実の地図上に設定した仮想現実課題を、生徒たちが実際に動きながらモバイルデバイスのGPSとARを使って解決していくというスタイルで、生徒の身体的活動や協働学習を促すことができる。

また、障害を抱える子どもにとって、テクノロジーは強力な学習サポーターになってくれる。ディスレクシアをはじめとする学習障害を持つ子どもは、紙媒体よりもモバイルデバイスの方が学習を進めやすいとも言われている。アイトラッキングや自然言語処理の技術を活用したサービスとしては、子どもが文章を読むときのつまずきを診断するシステム「Lexplore」や、ディスレクシアの子どもを対象とした読みと発音をサポートするシステム「Bookbot」が例として挙げられる。

VRセットやアイトラッキングデバイスなどのハードウェアは高価であり、学校や教育機関側にとっては導入コストが懸念材料になると考えられる。サポート体制さえ整えば、ドラえもんのどこでもドア的な世界が教室で繰り広げられる日も近いのではないだろうか。

現状と今後への期待

今回は広い視点からソリューションを概観したが、実際は1つのサービス内で複数のソリューションを提供していることがほとんどだ。さまざまなスタートアップがテクノロジーを活用して国内の教育課題にチャレンジしており、今後もEdtech市場はしばらく拡大し続けるだろう。

Edtech分野のスタートアップが抱えている大きな課題が、収益モデルの確立だ。BtoCの場合、ユーザーである中高生や学校から高額の利用料を得ることはできない。さらに教育は定量化が難しくかつすぐに成果が得られるものではないため、「費用対効果」よりも長期的なビジネスモデルを考えなければならない。

顧客獲得のルートとしては、行政や学校と連携がサービスの拡大を後押しすることもある。ポーランドやロシアでシェア率80%を獲得している「Brainly」は、ポーランドの教育省や教科書会社の後押しにより学校に徐々に広まっていき、ユーザー数の増加につながったという。

日本国内では昨年に行政が2020年までに学校で「1人1台タブレット」を目標に掲げたほか、2018年からは学校や民間教育機関でのICT教育やSTEM教育を推進する未来の教室」プロジェクトが開始されている。 学校や教師向けのソリューションとしてはGoogleやMicrosoftも豊富なツールを提供しているほか、国内のEdTech企業が提供する新しいプラットフォームも浸透しつつある。行政が本格的なICT導入に向けてどのように動いていくのか、そして現場で教師・生徒の学びがどのように変化していくのか、今後も注目していきたい。

※紹介したスタートアップのほとんどはすでにsunryseの中で取り上げられています。詳細は「#教育」でチェックしてみてください。

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