シンガポールで最も成長しているデジタル会社Circles.Lifeが生み出すコンテンツの秘訣

Circles.Lifeはシンガポールで最も成長しているデジタル通信会社のひとつである。オンライン上で様々なコンテンツを仕掛ける同社が、ユーザーとのエンゲージメントを高めるためのクリエイティブな秘訣を語る。
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クリエイティブ広告であれ、大胆なマーケティングキャンペーンであれ、シンガポールのデジタルサービス会社の「Circles.Life」は常に多方面でスポットライトを浴びている。

2019年は「契約と顧客サービスの低さ」を理由にライバルをからかって話題を呼び、2020年は同社が展開する「ディスカバープラットフォーム」に東南アジアのコメディアンを起用して、ユーザーを魅了している。

とっぴなアイデアに躊躇せず、最近では「アントレプレナーズ・イン・レジデンス」(EIR)と呼ばれる社内モデルを導入した。このモデルは社内の各部門の共同創業者になれる機会が従業員には与えられているものである。

EIRが管理職と異なるのは、個人が予算の編成から採用に至るまで、自分が担当する製品の全責任を負うことである。また、重要な意思決定をしたり、新しいアイデアを試したりできる自律性も与えられている。

現在新しいモデルの一員であり、「Circles.Life」が展開するサービスのデイリーポールとディスカバープラットフォームの責任者であるCarrie Sim氏とBenjamin Choo氏は近日、e27のインタビューに応じた。そして会社全体の成長に関連する高いROI(投資利益率)を生み出す魅力的なコンテンツ作成のためのプロセスについて、考えを共有した。

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すべては分析から始める

Carrie Sim氏とBenjamin Choo氏によると、どのようなコンテンツを発信する必要があるかを見極めるプロセスの一部には、データやメトリクスの分析に多くの時間を費やすことが含まれている。

デイリーポールはアプリ内の機能の一つで、楽しいクイズでユーザーを常に楽しませると同時に、効果的なコンテンツ作成のための価値ある洞察を提供するという目標を達成している。

Sim氏はランダムなトレンドを追って最終的に失敗することを避け、ユーザーが定着する可能性の高いアイデアを考え出す作業に、かなりの時間を費やしていると説明する。

「私たちには実験する余地がかなりある。ソーシャルメディア上の何かに焦点を当てて時間をかけ過ぎた結果、うまくいかないことに気づくのではなく、ポールの中で色々試してみて、どれがうまくいくかを観察できる」と言う。

「コンテンツ作成のために時間を投資する前に、短時間で素早く適応できるという点で非常に優れている。つまり、クリエイティブでありながらリスクを冒して新しいことをすることと、ユーザーがもっと見たいと言ったものの間のバランスが取れているということである」と彼女は続ける。しかしこのプロセスが成功への確実な道だとは限らない。

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「実験が必ずしも成功するとは限らない。失敗した場合は、なぜ失敗したのかを考え、その結果をチーム内で共有し、さらには取締役会でもそこから何を学んだのかを説明する。これこそが、創造性を生み出す方法ではないだろうか。私たちはこの一連のプロセスを試して、成功しなかったとしても、その失敗に対する説明責任を果たしている」

多様なチャネルで配信する

デジタルマーケティングの人気が高まるにつれ、さまざまなソーシャルメディアチャネルを使って製品やサービスを販売する可能性が高まっている。

エンゲージメントを最大化するためのアプローチの一つとして、異なるチャネル間でコンテンツをカスタマイズすることが挙げられる。Sim氏は、優れたコンテンツを作成するだけでなく、効果的に配信することも重要であると認識している。

「つまりコンテンツは質だけの問題ではなく、量の問題でもある。量より質を優先するというのは、質の悪いコンテンツを作らないための基準としては良い心がけである。しかし時には別の視点から考えなければならない。例えばデイリーポールはその一例である。そこから得た情報は、ブログの記事やソーシャルメディアの記事として、あるいはユーザーのためのメールを改善するための方法として、様々な方法で活用できる」

Sim氏の言葉によると「価値ある洞察は、私たちが作成する他のコンテンツを推進するのに役立つ」という。

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Choo氏は異なるチャネルの視聴者は、それぞれ異なる方法で魅了されている点に注目すべきだと付け加えている。彼は各チャネルのユーザーは、コンテンツに対する行動や嗜好が大きく異なると考えている。

「ディスカバープラットフォームでも、FacebookやInstagramのほか、Telegramや独自のプラットフォームなど、複数の配信チャネルをもっている。私たちが疑問に思うのは、すべてのチャネルで同じ方法を採用してマーケティングを行うべきなのか、それとも少なくとも各チャネルのオーディエンスと思われるユーザーに基づいて個別に最適化されたコンテンツをカスタマイズすべきなのか、ということである。Telegramを使っているユーザーは、FacebookやInstagramを使っているユーザーとは違うかもしれない」と彼は詳細に述べた。

「本質的にはこのような方法を採用することで、適切な人々に適切なメッセージを作成できるようになる。それが結果的にはより多くのユーザーを巻き込んだコンテンツの作成につながる」と強調している」

ユーザーに関連するサービスの考案

Choo氏はオーディエンスとの関連性を持つことが、注目を集め、ユーザーを会社に近づけるための一つの方法だと考えている。

その方法の一つは、ソーシャルメディアで人々の話を聞いたり、彼らに尋ねたり、どの投稿が最も多くのインタラクションやシェアを生み出しているかを見ることである。人を中心にした企業として「Circles.Life」は常にこのような努力を続けている。

「最近Facebookのニュースで特定の面白い機能が発表された時、デイリーポールチームとディスカバーチームは迅速に反応し、ユーザーが直接私たちと関わることができるInstagramのフィルターやテンプレートを考えた」とChoo氏は指摘する。

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他にも、外部の状況に迅速に対応した例として、同社が新型コロナウイルス感染症の拡大によるロックダウン中に、それぞれが抱えてしまう家での憂鬱な気分に打ち勝つために、コメディーショーを開催した事例もある。

しかし関連性というのはブランドによって異なる可能性があるため、2人はスタートアップに対して、ユーザーの人口動態や行動パターンに焦点を当てるようアドバイスしている。

両者は現在の消費者環境において、一口サイズのような短く手軽なコンテンツの人気が高まっている傾向があるという。さらにこのスタイルは、現在チームメンバーが制作に向けて取り組んでいるものの一つであると付け加えている。

最後に

Sim氏とChoo氏は、コンテンツの作成は単にソーシャルメディア上でトレンドとなっているものの経験則に従うだけではなく、様々な要因を整理し、深く分析することで、効果的なソーシャルエンゲージメントを生み出せると考えている。そして高いエンゲージメントは、企業内のさらなる成長に活用できるとみている。

翻訳元:https://e27.co/behind-the-creative-minds-of-circleslifes-cheeky-content-20200630/

‍表題画像:Photo by Good Faces on Unsplash (改変して使用)

記事パートナー
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執筆者
滝口凜太郎 / Rintaro TAKIGUCHI
Researcher&Writer
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