アジアの可能性:エアバス社がアジアの新規事業に出資する理由

世界的な航空機メーカーであるAirbus。同社のVCであるrbus Venturesが最近シンガポールにおけるデビューを果たした。
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先月、世界的な航空機メーカーのベンチャーキャピタルであるAirbus Venturesは、シンガポールで通信回線のラストワンマイルソリューションを提供するスタートアップ企業Transcelestialへの投資を実施し、シンガポールでのデビューを果たした。

東京に拠点を置く同ファンドパートナーのLewis Pinault氏は、今後もこの地域での投資を進めていく方針を掲げている。

Pinault氏はe27のインタビューに対して次のように述べている。

「アジア太平洋地域にはイノベーションの種が豊富にあると確信している。中にはあまり目立たないものもあるが、投資対象となる企業がこの地域で台頭してきている。」

Pinault氏によると、アジア太平洋地域の拠点として日本とシンガポールのどちらかを選ぶのは非常に困難であったと言う。日本とシンガポールは、いずれも小規模ではあるが立派なVC市場を有しており、イノベーションも豊富な魅力的な国である。

「両国にはグローバル人材が集まっている。また、両国の市場の透明性が気に入っている。シンガポールには多くの日本の投資家がいて、日本にも多くのシンガポール人の人材がいる。今後はこの地の利を活かしてシンガポールの投資にもより積極的に取り組んでいきたい」と付け加えた。

日本では既に数件の投資(炭素繊維リサイクル、InfoStellar、Telexistence)を行っているが、シンガポールも常にウォッチしていたという。

「シンガポールの印象的な点は、世界中から才能ある人材が集まる一方で、英語という共通言語が何不自由なく使えることである。民族や出自に関わらず、シンガポールの人々は英語を完璧に使いこなすことができ、多くの場合、他言語も操ることができる。」

また、シンガポールは教育や大学、また政府の支援プログラムが充実している。国際的なハブとしては小さいが、そのデメリットを上回る活気がある。

「日本とシンガポールはそれぞれ異なる長所を持っており、両国の良さにアクセスできることは私にとって大きな特権である。」

Pinault氏は、シンガポールでの2度目の投資を発表する予定であることも付け加えた。

2016年に設立された同ファンドは、独立性と自律性を持って運営している。Crunchbaseによると、Airbus Venturesはこれまでに「Airbus Group Venture Fund」と称し、2016年1月に1億5,000万米ドル相当を調達している。

市場筋によると、Airbus Venturesは現在、新たな大型ファンドを調達している最中だという。

このファンドは主に、将来的に航空宇宙産業を再定義するようなインパクトを持った「並外れたスタートアップ」に投資しており、これまでに世界中で46件の投資を行っている。

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「アジア太平洋地域では、新たな深宇宙能力や遠隔操作ロボティクス、接続システムなどの真のフロンティア技術の進歩が見られ、これらは特別で重要なものだと考えている」とPinault氏は述べている。

「大まかに言えば、自律性と自律システムの接続性、電化、サイバーセキュリティ、高度なコンピューティング、ロボット工学、AI、新宇宙、深宇宙技術に関する論文に焦点を当てている」と述べる。また、特に東南アジアでの製造のための新しい材料ツールやデザインにも力を入れている」と付け加えた。

Airbus Venturesは、グローバル・ファンドから投資を行っており、アジア地域向けの別のファンドは運営していない。また、投資のほとんどはアーリーステージの企業や成長ステージの企業に集中させている。

「AirbusのB/Sから投資することはない。今後は同ファンドのかなりの割合がアジア太平洋地域に費やされ、投資されることを期待している。」


翻訳元:'Asia Pacific is rich in innovation': Airbus Ventures Partner Lewis Pinault

‍表題画像:Photo by Pascal Meier on Unsplash (改変して使用)

記事パートナー
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執筆者
松尾知明 / Tomoaki Matsuo
中小企業診断士 / Web Writer
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