ウクライナのスタートアップ:今後のスタープレイヤーたち

大きな政治的混乱を経験してきたウクライナのキエフ。そんな背景の中、イノベーションの加速のために生まれてきた将来性溢れるスタートアップを紹介しつつ、ウクライナのエコシステムについて見ていきたい。
経営者

(写真引用元:Photo by Denys Rodionenko on Unsplash)

先日、ウクライナ人と仕事をしている友人と話をした。彼の意見はやや控えめなものだった。彼の言葉を借りれば、「ロシア人とウクライナ人のいとこ同士の諍いは、関係性の問題と言うよりも、お金絡みの問題だ」とのこと。

この私の友人は、東欧にルーツを持つ尊敬すべきアメリカ人起業家であるため、彼の言葉を少し考えてみた。そして徐々に、私は彼の言葉に反論を覚えるようになった。ウクライナ人の”詐欺師のようなふるまい”と呼ばれるものは、彼らのほとんどが無意識のうちに見せるデフォルトの大胆な、肝の据わった振る舞いではないかと思うのだ。ウクライナの若者たちは、少なくとも私が直接知っている人や、スタートアップのエコシステムに積極的に関わっている人たちは、自分の行動に細心の注意を払い、隠し事をせず、そして信頼の重要性を理解している。また、首都のスペルを正しく綴れた時には絶賛してくれるひょうきんな面も持ち合わせる。キエフの Lift99のコミュニティ・マネージャーである友人のMykyta Tsylyurykは、私が「Kyiv」を「Kyev」と綴りたいという衝動に駆られた時に、少なくとも5回は訂正してくれた。

ウクライナは、数年前にキエフで起きたユーロマイダンに端を発した深い政治的混乱を経験している。2013年にYanukovych大統領がEU加盟の前段階のプロセスである安定化・連合協定への署名を拒否したことが発端となった血なまぐさい内乱の影響を、キエフ市は今なお感じている。キエフは、その大部分が親EU派の人口であり、市民が怒りを爆発させたのも頷ける。

この出来事は、文字通りすべてのウクライナ人の生活に影響を与えた。その結果の一つがウクライナ・フリヴニャの切り下げであり、ウクライナは不況に陥った。腐敗した政府が国民を引きずり出すことは困難になり、ウクライナ人は自分たちで身を守り、そして社会を再構築しなければならなかった。

そのような環境下で、イノベーションのスピードを加速させるためにテクノロジーを活用した再発明に成功したウクライナ人もいた。数年のうちにいくつかのスタートアップの成功例が生まれ、そのうちのいくつかは国際的にも注目されるようになった。今日では、「Uber」、エストニアの「Bolt」、そしてウクライナの「Uklon」という3つのライドヘイリングアプリがキエフの覇権を争っている。

Grammarly」は、ウクライナの有名なスタートアップ製品として、その存在を際立たせている。(私が今、この記事のスペルチェックのために使用しているのもGrammarlyだ。)2019年10月に9,000万ドルを調達した後、”ユニコーン”となったこの会社は、エストニアにとってのSkypeのような存在と言える。人々の心、ベンチャーキャピタル、そして最も貴重な資産と言える、世界中のスタートアップのメッカからの興味・関心を引き寄せる磁石のような役割を果たした。「Grammarly」は、ウクライナで働きながら生活することが手頃になったタイミングで、正式にウクライナを世界のスタートアップマップ上に一国家として載せた。

また、最近まで比較的知られていなかったウクライナのスタートアップが今、世界的な注目を集めている。「Restream.io」は、ユーザーが同時に複数のプラットフォームでライブストリーミングを行うことができるストリーミングプラットフォームである。COVID-19の流行とそれに伴う在宅ワーク現象は、ライブストリーミングを含むリモートワークを簡易化するプロダクトとサービスにとって、大きな後押しとなった。ストリーミングは、COVID-19の感染拡大前からすでに普及しており、Facebookでは、動画の5本に1本がライブ放送になっている。

Restreamの成功には前例がない。Lift99の創設者であり、同社の投資家の一人であるRagnar Sass氏によると、Restreamは過去2ヶ月間で主要な測定基準の2倍値をたたき出している。100万人以上のユーザーと4,100万回以上の放送をプラットフォーム上で行っており、オースティンのインターナショナル・アクセラレーターにも受け入れられ、最近ではオースティンのSilverton Partnersから500万ドル以上のベンチャーキャピタルの資金調達を確保した。

これらの例で示されているのは、ウクライナのエコシステムの広義での成長だ。Deal Bookによると、ウクライナのスタートアップは2017年に2億6,500万ドルを調達したのに対し、2018年には2億9,000万ドルを調達した。そしてその値は、2019年には5億ドルを超えた。そのエコシステムが非常にダイナミックであることが証明されたと言える。エストニアを拠点とするLift99のコワーキングスペースは、「Abstract」による「Flawless」アプリの買収でキエフでの立ち上げからわずか1年後に初のイグジットの成功を見せた。他にも、ディープフェイク画像・映像のスタートアップである「AI Factory」のSnapchatによる買収や、ウクライナで設立されたソーシャルカジノゲームのパブリッシャーである「Murka」のBlackstoneによる買収などが注目されている。

オフショアの技術人材市場として長く知られてきたが、ウクライナのエコシステムは今、本国内でのゲームをステップアップさせている。

BLAZE ARIZANOV

Co-founder at StayUncle

ベストセラー作家であり、スタートアップに情熱を注ぐ者であり、南アジアでおそらく最高のコピーライターである。Inkblot Mediaのコピーライティング担当であり、Launch In IndiaStayUncleの共同創業者。

翻訳元:STARTUP UKRAINE: AN OVERVIEW OF ITS UPCOMING STAR PLAYERS

https://startupuniversal.com/startup-ukraine-an-overview-of-its-upcoming-star-players/

記事パートナー
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執筆者
武田彩花 / Ayaka Takeda
Contents Writer
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