フランスChangeNOWイベントレポート:地球を救うアイディアが集結

フランス・パリで開催された「ChangeNOW」では、地球課題の解決を目指すスタートアップや起業家、NPO、大企業、政策立案者が集結した。当日の会場の様子や注目のスタートアップを紹介する。
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2023年5月25日から27日に、地球課題の解決を目指すスタートアップや起業家、NPO、大企業、政策立案者が集結した「ChangeNOW」がフランス・パリで開催された。2017年に社会的企業として発足し、以降毎年、1,000以上の具体的な行動やソリューションを展開し、より良い環境と社会の転換を加速させることをミッションとして、SDGsを達成するためのあらゆる取り組みを支援するためのカンファレンスを「地球最大のソリューションイベント」として開催している。2023年は3日間で400人以上のスピーカー、1,200人の投資家、120カ国から1万人の参加者が集ったという。SUNRYSEでは今回、フランス・パリで現地取材を行なった。同記事では「ChangeNOW」とサイドイベントの様子を紹介する。

「ChangeNOW」イベント会場(写真:SUNRYSE)

2024年のオリンピック開催を控えるパリの選手村建設現場を見学

「ChangeNOW」前日にフランス・パリ地方のビジネス開発を促進・支援する経済開発機関Choose Paris Region主催のツアーに参加し、オリンピックに向けて建設が進む選手村を訪れた。選手村の建物は、フランス産や欧州産の木材を中心に作られ、資材の現地調達が進められている。さらに建物の床の下に水道管を通し、夏は冷たい水を、冬は暖かい水を流すことでエアコンを使わない環境に配慮した建物を作っているそうだ。同ツアーには、オランダやオーストリア、ケベック、香港、シンガポール、日本から気候変動やSDGs関連の取り組みに携わる関係者が多く参加し、パリ市の取り組みを学んだ。

パリ市内から選手村までの移動は水素タクシー、hype。車種はトヨタのMIRAIで2023年5月までにフランス市内で約100台走っているそうだ(写真:SUNRYSE)

ツアーで見学した、建設が進む選手村(写真:SUNRYSE)

会場の様子

「ChangeNOW」の会場はエッフェル塔の前に構える展示会場及び複合施設であるGrand Palais Ephémèreだ。会場には業界毎に分かれたブースと4つのトークステージが用意されていた。

エッフェル塔の目の前にある会場とトークステージ(写真:SUNRYSE)

最終日の5月27日は土曜日であり、子供や学生向けのチケットの価格は10ユーロと他のスタートアップイベントに比べて安く設定されていたことから親子連れの参加者も見受けられた。(写真:SUNRYSE)

フードトラックエリアの各レストランが出しているメニューには、カロリー表示ではなく、生産・流通において排出された二酸化炭素量が表記されていた(写真:SUNRYSE)

注目の出展スタートアップ

「ChangeNOW」にはサーキュラーエコノミー関連のスタートアップが多く出展しており、その中でも興味深かったスタートアップを紹介する。また海藻関連の事業も多く、その中で特に参加者の注目を集めていたスタートアップを紹介したい。

Ricehouse

(写真:SUNRYSE) 米のサプライチェーンから発生する籾殻や稲わらなどの副産物を利用して家を建てるイタリア発スタートアップだ。同社によると米の副産物を利用することにより、建設部門の汚染を80%削減できるという。また同社は米の工業加工で得た副産物処理のノウハウを活かし、デザインから家具、ファッション業界と協業し製品開発も行なっている。

CRIATERRA Earth Technologies

(写真:SUNRYSE)

原材料の70%を廃棄物から調達する、製造に使用するエネルギーを全て再生可能エネルギーでまかなっている円形石積みブロックとプレキャスト製品を開発したイスラエルのスタートアップだ。同社の製品はセメントを使用しておらず、セメントと比較して温室効果ガス排出量を92%削減し、持続可能な循環都市構築をサポートする製品を提供する。

Releaf Paper

(写真:SUNRYSE)

落ち葉を利用して、再生・生分解可能な紙製包装材を製造しているウクライナ発のスタートアップだ。同社製品1トンあたり通常の製造方法に比べて17本の木を節約、二酸化炭素排出量を78%削減、エネルギー使用量をエネルギー使用量を1/3、水使用量を1/15の削減を可能にした。

EcoBean

(写真:SUNRYSE)

コーヒーかすの回収サービスとそれらを用いた加工製品を提供するワルシャワ工科大学発のスタートアップだ。例えばコーヒーかすから抽出したオイルは、抗酸化作用と抗炎症作用があるためスキンケア化粧品に使用可能であり、さらにバイオディーゼル製造の原料に適しているという。

ecorbio

(写真:SUNRYSE)

バイオマス副産物を利用し、ポリウレタン合成の原料であるバイオポリオールの生産を行なっているキプロス発スタートアップ。ポリウレタンは、断熱材や家庭用建築充填フォーム、プラスチック、商用および家庭用木材接着剤の製造に広く使用されており、建物や家具などで産業上の応用が可能だ。同社の特許出願中の化学品製造プロセスは、複数の産業副産物と廃棄バイオマスを原料として組み込んでいる。

Swedish Algae Factory

(画像:同社HP)

スキンケア製品やソーラーパネル、リチウム電池(市販のリチウムイオン電池に比べて約5倍の蓄電容量を持つ)に使用される藻類素材を開発したスウェーデンのスタートアップだ。同社が開発したAlgicaは、特許を取得したバイオテクノロジー成分だ。肌に潤いを与えるだけでなく、肌色バランスを整え、汚染から保護する。また同社が用いる藻類の1種である珪藻の殻は、紫外線を遮断する効果があるためソーラーパネルに使用することで劣化を軽減できるという。

編集後記

今回、業界を超えてサーキュラーエコノミーに関連するスタートアップが多く出展しており、使われない捨てられるはずだった原料や副産物に注目し、新しい地球環境に優しいソリューションを生み出しているスタートアップが多かった。サーキュラーエコノミーの実現には幅広い業界、業種の連携が必要であるため、SUNRYSEでは今後も海外のサーキュラーエコノミー事例に注目し、日本進出に興味のある海外スタートアップと日本企業の架け橋として、日本のオープンイノベーションを担っていく。


SUNRYSEでは海外スタートアップカンファレンス視察、海外スタートアップと日本企業の協業サポートを行なっています。海外スタートアップへの投資、協業に興味のある方、ぜひご連絡お待ちしております。


表題画像:Photo by SUNRYSE

執筆:Sayaka Nakashima

編集:Eri Furukawa, Minori Fujisawa

表題画像作成:Naoko Ogawa

執筆者
中嶋 清楓 / Sayaka Nakashima
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