顧客獲得の必勝法:農業でECを活用する際に欠かせない5つのポイント

昨今、あらゆる業界でオンライン取引が当たり前のように取り入れられているが、アグリビジネスへの普及は始まったばかりである。本記事では、アグリ系Eコマースを志向するスタートアップが意識すべき5つのポイントについて解説する。
農業 EC

先進国、発展途上国問わず、消費者の購買パターンに変化が起きている。現代の消費者は、食品の内容、原産地、鮮度、安全性に対する関心がとにかく高い。実際、地元で栽培された食品や有機栽培された食品に対する需要も増加傾向である。

先進国では、レストランや卸売小売業者などによる生鮮食品のオンライン大量注文が既に当たり前になってきている。一方、一般消費者においては、生鮮野菜、果物、肉のオンライン購入が普及し始めたばかりである。

アグリ系Eコマースにはとてつもない可能性がある。しかし、一般消費者による生鮮食品のオンライン購入へのシフトは依然としてハードルが高く、あらゆる障壁を克服する必要がある。

アグリ系EC分野に進出することを計画しているスタートアップにとって、食品の品質、食品の安全性、食品のバリューチェーンを管理することは、顧客のエンゲージメントを高める上で重要な要素である。

本記事では、アグリ系Eコマースのスタートアップが意識すべき5つのポイントについて説明する。

1. 需要予測による売上アップ

需給バランスの調整は、食品バリューチェーンにおけるロスを回避する上で最も重要な概念である。卸売業や飲食店などの大口バイヤーと個人顧客などの小口バイヤーからの注文を事前に蓄積・把握しておくことで、将来の在庫量に伴う需給状況を効率的に計画することができるからである。

インドのアグリ 系E コマースベンチャーであるCrofarmでは、バイヤーからの需要を事前に把握し、その需要量をもとに農家に必要収穫量を通知するシステムを構築している。注文量は事前に計画されているため、農場から消費者・購買者への配送は 12 時間で済む。

また、グループ購入プロモーションによってバイヤーにインセンティブを与える手法も取り入れられている。Dropee(マレーシア)の事例を参考にした形である。

さらに、農産物の余剰が生じる場合は、常連顧客に2~3日前に在庫状況を通知することができる。このようにして、事前に計画された発送サイクルの間にすべての製品を一緒に転送することができ、追加の運用コストを節約することができる。

サプライチェーンデータを蓄積することで、将来の消費需要を適切に予測し売上増加につなげることができる。

2. 製品品質に対する懸念

Eコマース事業者の重要な課題の一つに「品質に関する懸念の軽減」が挙げられる。食品栄養価についての保証を必要とする顧客の間では特に重要視されている。

この懸念を払しょくするには、顧客と作物の生産過程を共有するために農家にインセンティブを与える必要がある。種子の品質、作物の栄養、農業技術、などの証拠と詳細を提供する農家にプレミアムバッジを付与するなどの手法が起案されている。

この方法には他のメリットもある。サプライチェーンの情報をしっかり把握することで、製品価値と製品価格の正当性を判断することが可能になる。GoFarmz- Know your farmer (インド)では、農家の詳細情報を提供することで有機栽培食品の品質面の詳細を開示しており、これが顧客の懸念を軽減させる働きをしている。

配達品質の評価も重要である。農家から顧客までの配達品質についてフィードバックする仕組みを付与することで、生産者にとって品質の高い梱包を提供し売上を伸ばすモチベーションを上げることが可能となる。

3. 食品トレーサビリティの実現

食品トレーサビリティは、消費者/企業間の信頼を構築するための重要な手法である。E コマースプラットフォームの食品トレーサビリティ機能を使えば、消費者はサプライチェーンのどの段階でも製品をリアルタイム追跡することができる。

食品トレーサビリティは、食品の安全性や業務効率を確保するためにも重要である。Ninjacart(インド)は近日中に、生産者と顧客をつなぐフード・トレーサビリティ・システムを公開する予定である。これにより、生産者、農産物を扱った倉庫、商品を運んだトラックなどの詳細が提供される。

4. 顧客要求への対応

顧客の利便性を追求するためにコミュニケーションチャネルを充実させることも考えなければならない。メール、ホットライン、Facebookメッセンジャーなどの通常のコミュニケーションチャネルに加え、Whatsappなどを介したより緊密かつ高頻度のサポートを提供することを考えるべきである。

また、信頼構築はアグリ系Eコマースの農家と消費者の双方にとって重要である。透明性の高い取引は長期的な関係構築を促し、事業者と消費者の高い満足度に繋がる。Lazadaは消費者が求める製品情報の透明性を担保しており、ユーザーの高い満足度に結び付けている。

5. 品質チェック

返品率の高さは、アグリ系Eコマーススタートアップの評判を傷つける。また、交換品や返金を提供するためのコストも高くなる。専用の施設で品質管理を行うことで、農産物を等級付けし、欠陥があれば廃棄するなどの手法を考えることも必要である。

また、外部の検証チームを雇用して、物理的な管理チェックの運用コストを節約することも考えるべきである。Lima Links(ザンビア)は、農場のリーダーや農家に品質管理を委託している。

しかし、このアプローチに加担しすぎると、スキルの低い農家が低品質の商品をどんどん出荷しはじめる可能性があり、ビジネスの評判を損ねる懸念があるので注意が必要である。

アグリ系Eコマーススタートアップは、安価かつ良質な食品を提供するために、常に顧客ニーズに敏感でなければならない。

上述した5つのポイントとは別に、顧客のニーズを満たすために強力な農家のコミュニティを構築することも目指すべきである。

翻訳元:5-step strategy for agri e-commerce startups to engage customers

記事パートナー
アジア各国のスタートアップシーンを世界に発信するオンラインメディア
執筆者
松尾知明 / Tomoaki Matsuo
中小企業診断士 / Web Writer
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